サッシというと「断熱性能」が注目されがちですが、実はそれだけではありません。
実際の暮らしの中では、「音」や「防犯性」も快適な住まいに欠かせない重要な要素です。
窓の性能が変わると、騒音ストレスが減ったり、泥棒が侵入しづらくなったりするなど、防音・防犯の面でも大きな違いが出ます。
この記事では、「断熱以外」の視点から、窓の性能を見直すヒントをご紹介します。
■ 第1章|窓から「音」はどれくらい入ってくるのか?
壁よりも圧倒的に薄く、隙間も多い「窓」は、家の中で一番音が通りやすい場所です。
特に大通り沿いや線路近くの家では、交通音や電車の走行音、人の声などが常に入ってくるため、ストレスの原因になることもあります。
実際、国土交通省の調査によれば「近隣の騒音が気になる」と答えた人のうち、約7割が「窓を閉めても音が気になる」と回答しています。
(※参考:住宅市場動向調査2023年版)
▶ ガラス構成による遮音性能の違い(参考例)
ガラスの種類 | 一般的な騒音カット効果 | イメージ例 |
---|---|---|
単板ガラス(1枚) | 約25〜30dBカット | 人の話し声が丸聞こえレベル |
複層ガラス(2枚) | 約35〜40dBカット | 普通の会話がほぼ聞こえない |
トリプルガラス(3枚) | 約40〜45dBカット | 騒音が気にならないレベル |
高性能な窓になるほど、音を遮る力が強くなることがわかります。
たとえば、トリプルガラスを使用した窓では、外の車の通過音がほとんど気にならなくなるケースもあり、住宅街や幹線道路沿いの住宅では採用が進んでいます。
遮音性能は「dB(デシベル)」という単位で表され、10dBの違いで体感音量は約半分に感じると言われています。
そのため、防音性能の高い窓を選ぶことで、住環境の静けさは格段に向上します。
■ 第2章|サッシの素材と開き方で、音の通り方が変わる
窓の防音性を語るうえで、ガラスの厚みや枚数が注目されがちですが、実は「サッシ(窓枠)」の素材や構造も音の出入りに大きく関わっています。
サッシ部分に隙間があると、どんなに厚いガラスを使っていてもそこから音が漏れてしまいます。
特にサッシと窓ガラスの接合部や、サッシ同士が接する部分の気密性が低いと、遮音性は一気に下がってしまいます。
なぜサッシの素材が重要なのかというと、素材の「熱や音の伝えやすさ(伝導率)」が防音性能に直結するからです。
たとえば、アルミは熱や音を通しやすい金属なので、アルミサッシは外からの音をそのまま室内に伝えてしまいやすい傾向があります。
一方で樹脂(プラスチック素材)は、音や熱を通しにくいため、室内外の音を遮断しやすいのです。
つまり、防音性能を高めるためには、ガラスだけでなくサッシも一緒に見直すことが大切なのです。
▶ 素材別で見る遮音性能
- アルミサッシ:
アルミニウムは金属の中でも特に熱や音を伝えやすい性質があるため、外からの騒音を室内に伝えやすい傾向があります。
また、素材自体が硬く変形しにくいため、細かい部分の密閉性が不十分になりやすく、サッシのすき間から空気や音が漏れやすくなります。
さらに、単体での断熱性も低いため、気温の影響を受けやすいという特徴もあります。そのため、防音や断熱を重視する場合には注意が必要です。 - 樹脂サッシ:
プラスチック素材でできており、アルミに比べて熱や音を伝えにくい性質があります。
素材自体が柔らかく、ガラスとの接合部やパッキンとの密着性が高いため、すき間を作りにくく、気密性に優れています。
これにより、外からの音をシャットアウトしやすく、冷気や熱の出入りも最小限に抑えることができます。
また、室内外の温度差によって発生する「結露」が起こりにくく、カビやカーテンの汚れといった二次的な問題も軽減できます。
樹脂サッシは断熱性・遮音性・快適性のバランスがとれた選択肢として、多くの高性能住宅で採用されています。
▶ 開き方別で見る遮音性能
窓のタイプ | 特徴と遮音性 |
FIX窓(開かない窓) | 最も密閉性が高く、遮音性も非常に高い。 そもそも開閉しないため、構造上隙間が生まれず、音漏れの心配がほとんどない。 高所や景観重視の空間に向いている。 |
すべり出し窓 | ゴムパッキンでしっかり密閉される構造のため、防音性に優れる。 風を効率よく取り込みながらも、閉じたときには密閉性が高く、音漏れを防ぐことができる。 引違窓よりもロック箇所が多く、防犯性も高い。 |
引違窓 | スライド式でレールに沿って動かす構造上、どうしても左右のサッシの間や上下レール部分に隙間ができやすく、気密性が低くなる。 この隙間から音が出入りしやすく、防音性は他のタイプに比べて劣る傾向がある。 加えて、ロックが中央1か所だけのものも多く、防犯面でも不利な場合がある。 |
特に引違窓は、日本の住宅に多く採用されてきたものの、防音性を考えると見直す必要があるかもしれません。
■ 第3章|防犯性が高いサッシの特徴とは?
意外に思われるかもしれませんが、住宅に侵入する泥棒の多くは「玄関」ではなく「窓」から入ってきます。
警察庁の発表によると、住宅への侵入窃盗のうち、実に約6割が窓を破る、またはこじ開けるといった方法によって行われています。
(※出典:警察庁「住まいの防犯対策」)
なぜ窓が狙われやすいのかというと、多くの家庭では窓の鍵が1か所だけで、防犯意識がやや低くなりがちだからです。
特に引違窓は構造上、サッシの外れ止めが弱かったり、鍵のかかりが甘かったりするため、バールやドライバーなどの簡単な工具で開けられてしまうケースもあります。
さらに、窓は外から見えにくい場所に設置されていることが多く、犯人が作業しやすいという「環境的な盲点」も原因です。
特に夜間や留守時に狙われるケースが多く、ガラスを割らずに鍵を開ける「サムターン回し」などの手口も報告されています。
▶ 防犯性の高い窓の条件
ロックが複数あること(補助錠付き)
侵入者はとにかく“時間がかかる”ことを嫌います。
鍵が1か所だけであれば、バールやマイナスドライバーなどの簡単な道具で一瞬でこじ開けられる可能性があります。
ロックが複数あることで、開錠にかかる手間が増え、侵入を諦める確率が高くなります。
実際、防犯対策の講習では「2ロック以上で侵入率は半減する」と言われています。
防犯合わせガラスが使用されていること(割れにくく、こじ開けづらい)
通常のガラスは1枚割ればそのまま手が入りますが、防犯合わせガラスは中間に特殊なフィルムが挟まれており、割ってもガラスが飛び散らず穴も開きません。
侵入者側から見ると「割っても突破できない」ため、音を立ててまでリスクを冒すメリットがなくなります。
警察庁のデータでも、防犯合わせガラスがある家は窃盗被害の割合が著しく低いとされています。
開け方が外からアクセスしにくいこと(すべり出し窓や高所のFIX窓など)
引違窓などは外から手が届きやすく、鍵の構造も単純なため侵入者にとっては“扱いやすい窓”です。
逆にすべり出し窓はロック箇所が複数あり、ガラス面に対して垂直方向に力を加える必要があるため、開けづらく目立ちやすい。
高所にあるFIX窓(開かない窓)はそもそも物理的に侵入が不可能です。
侵入者にとって「近づきにくく、工具が入りにくい窓」は、ターゲットとして選ばれにくくなります。
▶ 引違窓のリスク
クレセント錠(中央の1か所の鍵)のみでは不十分
多くの引違窓に採用されている「クレセント錠」は、窓の中央に1つだけ付けられたシンプルな回転式の鍵です。
この構造では、1点しか固定されておらず、バールやドライバーでサッシの端をこじるだけでロックが外れてしまうことがあります。
侵入者からすれば「1か所を突破すれば入れる窓」は最も好都合です。
サッシを外から外される危険性がある
引違窓は、上下のレールに沿ってスライドする構造のため、サッシを持ち上げて外すことが物理的に可能な場合があります。
特に築年数の古い住宅では、サッシの防外れ対策が不十分で、外側から強く押し上げることでサッシごと取り外されてしまうケースもあります。
ガラスが1枚のみだと破って開錠されやすい
単板ガラスは薄く、ハンマーや硬い物で1打するだけで簡単に割れてしまいます。
そのため、手を入れて鍵を回すだけで開けられる「打ち破り侵入」が非常に容易になります。
しかも音があまり響かないように割るテクニックもあり、侵入者は最小限の音と時間で侵入することが可能です。
▶ 防犯性の高い窓の具体例
すべり出し窓(外から開けにくく、ロックも複数箇所)
すべり出し窓は、窓を外側に押し出して開けるタイプで、ロックの数が多く、隙間も生まれにくいため非常に気密性が高いのが特徴です。
構造上、外側から手を入れて鍵にアクセスすることが難しく、バールなどの工具も使いにくい位置にロックが配置されています。
侵入者にとっては手間もリスクも大きいため、敬遠されやすいタイプの窓です。
高所設置のFIX窓(開かないため侵入不可能)
FIX窓はそもそも開閉機構がないため、物理的に破って侵入することができません。
特に2階や吹き抜けの高所に設置されたFIX窓は、侵入者からすれば“挑む意味がない”完全なシャットアウトゾーンとなります。
採光性を確保しながらも、安心できる窓の代表例です。
内窓(二重窓)と組み合わせた構成も有効です
既存の窓の内側に、もう1枚サッシとガラスを設ける「内窓(二重窓)」は、断熱性や防音性の向上とともに、防犯性を大幅に高める効果もあります。
侵入者にとっては2重のガラスとロックを突破しなければならず、時間も音もかかるため、非常にリスクの高いターゲットになります。
また、補助錠の追加も容易なため、防犯対策として非常に優れた手法です。
■ 第4章|防音・防犯を両立させる窓選びのポイント
住まいの快適性と安全性を高めたいなら、防音性と防犯性を兼ね備えた窓選びが欠かせません。
どちらか一方だけでは、騒音のストレスや空き巣被害といったリスクを防ぎきれないこともあります。
ここでは、両方の性能をバランスよく備えた理想の組み合わせと、それぞれの選択がなぜ重要なのか、その理由を詳しく解説していきます。
▶ 理想の組み合わせ
複層またはトリプルガラス
ガラスが2枚または3枚重なった構造により、音や熱の伝わりを遮断します。
特にトリプルガラスは遮音性能・断熱性能ともに非常に高く、外の騒音を遮りつつ、室内の快適な温度も保つことができます。
樹脂サッシ(高い気密性)
アルミサッシよりも気密性と断熱性に優れ、隙間が生まれにくいため音漏れや熱の出入りを最小限に抑えます。
窓枠とガラスがしっかり密着することで、外からの侵入もしにくく、防犯性にも優れています。
すべり出し窓 or FIX窓(隙間が少ない)
すべり出し窓はゴムパッキンによって密閉されるため、音も空気も漏れにくくなります。
FIX窓(開かない窓)は構造上まったく隙間がないため、防音性・防犯性ともに最高レベルです。
開け閉めが不要な場所には最適な選択肢です。
この組み合わせで、断熱性・防音性・防犯性を高いレベルで実現することができます。
もし予算の都合やリフォームの制約がある場合は、「内窓(二重窓)」の設置も検討してください。
▶ DIYでできる補強例
リフォームや窓交換はハードルが高いけれど、今すぐできる対策が欲しい…という方には、以下のようなDIYによる補強がおすすめです。
コストを抑えつつ、防音性・防犯性を少しでも高めたい方にぴったりです。
補助ロックの設置(1,000円程度から)
引違窓や掃き出し窓など、ロックが1か所しかない窓には、後付けの補助錠を設置することで防犯性が格段にアップします。
特にサッシの上下に追加するタイプの補助ロックは、バールなどの工具によるこじ開け対策として非常に有効です。
侵入者にとっては「複数のロック」があるだけで、手間とリスクが跳ね上がります。
防犯フィルムを貼る
ガラス面に貼る透明のフィルムで、窓ガラスを割れにくくする効果があります。
防犯ガラスのような構造を後付けで疑似的に再現できる方法として人気です。ガラスが割れても飛散せず、穴が開きにくくなるため、ガラス破りの侵入を防ぎやすくなります。
室内から貼れるタイプが多く、施工も比較的簡単です。
すき間テープで気密性を上げる
サッシと窓枠の間にすき間があると、そこから音が漏れたり外気が侵入したりします。
すき間テープはホームセンターなどで数百円から購入でき、気になる部分に貼るだけで気密性を向上させることができます。
特に引違窓の上下レールやサイド部分などに使うと、防音・断熱の効果が実感しやすくなります。
これらのDIY補強は、特に築年数の経った住宅や賃貸物件で活用しやすい方法です。
「少しでも安心・快適に暮らしたい」という方に、まず試していただきたいアクションです。
■ 第5章|家庭タイプ別おすすめサッシ構成
住宅の立地や住まい方によって、求められる窓の性能は大きく異なります。
この章では、3つの代表的な家庭環境に応じたおすすめのサッシ構成を紹介し、それぞれの選定理由や背景について詳しく解説していきます。
幹線道路沿いに住んでいる家庭
幹線道路に面した住宅では、交通量が多く、車の走行音・エンジン音・信号機の音など、昼夜を問わず騒音のストレスを感じやすい環境です。
特に大型車が通過する道路では、振動による微細な揺れや音圧も発生し、快眠や集中の妨げになることがあります。
- おすすめ構成:トリプルガラス+樹脂サッシ+FIXまたは縦すべり出し窓トリプルガラスは、3枚のガラスと2層の中間空気層を持ち、音の振動を段階的に減衰させる効果があります。
特に低周波音に対して高い効果を発揮し、幹線道路沿いのような環境下でも、室内の静けさを確保できます。樹脂サッシは気密性が高く、すき間からの音の侵入を防ぎます。
さらに、FIX窓や縦すべり出し窓は、構造的にすき間ができにくく、引違窓に比べてはるかに防音性が高いです。
開け閉めが少ない部屋ではFIX窓を、通風も必要な部屋では縦すべり出し窓を選ぶとよいでしょう。
小さな子どもがいる家庭
子どもがいるご家庭では、安全性と防犯性の両立が重要です。
特に就学前の子どもがいる場合、目を離したすきに窓を開けてしまったり、外部からの侵入を受けやすい位置に窓があると、思わぬ事故や被害に繋がることがあります。
- おすすめ構成:防犯合わせガラス+補助ロック付きすべり出し窓防犯合わせガラスは、2枚のガラスの間に特殊な樹脂フィルムを挟んだ構造で、衝撃を加えても穴が開きにくく、ガラスが飛散しないため安全です。
これにより、万一子どもが何かをぶつけても大きなケガをしにくく、外部からの侵入にも高い防御力を発揮します。すべり出し窓は、ロックが複数箇所にあり、外部からのこじ開けに強いだけでなく、子どもが簡単に開けることも難しい構造になっています。
さらに、補助ロックを追加すれば、日常的な開閉防止や換気時の誤開放対策にも有効です。
築30年の家をリフォーム検討中
築年数の経った住宅では、窓枠やガラスの劣化が進み、断熱性・防音性・防犯性が著しく低下しているケースが多く見られます。
ただし、窓をまるごと交換するには費用も大きく、工期も長くなりがちです。
- おすすめ構成:既存サッシの内側に「内窓(二重窓)」を追加内窓(二重窓)は、既存の窓を残したまま、その内側にもう1枚新しい窓を取り付けるリフォーム手法です。
既存の窓との間に空気層が生まれ、音や熱を伝えにくくする「緩衝ゾーン」となります。
この効果により、断熱性・防音性はもちろん、窓を2重にすることで侵入に時間がかかるため、防犯性の向上にもつながります。工事は1〜2時間ほどで完了し、費用も窓の全交換よりはるかに安く抑えられます。
また、国の補助金(例:先進的窓リノベ事業)の対象にもなっており、経済的メリットも非常に大きいです。
初めての窓リフォームとして最適な選択肢です。
■ まとめ|安心・静かな暮らしはサッシ選びから
窓は単なる「明かり取り」や「景色を見るための開口部」ではありません。
遮音性・断熱性・防犯性といった、住まいの快適性と安全性に直結する極めて重要なパーツです。
特に現代の住環境では、住宅の気密性が高まり、窓の性能が暮らしの質を左右する割合が大きくなっています。
以下のような悩みや希望を持っている方は、ぜひ一度、窓とサッシの見直しを検討してみてください:
- 外からの騒音で日常的にストレスを感じている方
- 子どもや高齢者のいる家庭で、防犯対策を強化したい方
- 冷暖房効率を上げて光熱費を抑えたいと考えている方
本記事で紹介したように、ガラス・サッシの種類や開き方の工夫によって、快適さと安全性を高次元で両立することは十分に可能です。
しかも、内窓の追加や補助ロックの設置といった比較的手軽な方法でも、効果は実感できます。
快適な室温を保ち、外の音を遮断し、不審者の侵入も防ぐ――そんな家づくりの第一歩は、毎日目にする“窓”から始まります。
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