比較的新しい種類の断熱材で、環境にやさしく、調湿性能のある断熱材である、木質繊維断熱材を検討してみます。
木質繊維断熱材とは
木質繊維断熱材は間伐材や樹皮を利用した断熱材で、自然素材から作られています。
木質繊維断熱材の熱伝導率は0.041で、他の断熱材に対しても遜色のない断熱性能があります。
そして他の断熱材と違う木質繊維断熱材の特徴として、熱容量の大きさがあげられます。熱容量とは熱を蓄える蓄熱性のことです。熱容量が大きいと「位相の遅れ」と呼ばれる現象が現れます。これは、昼間の日射で屋根や壁が吸収した熱を断熱材が蓄え、蓄熱量が多い分室内への熱の移動が遅れるという現象です。
研究結果では木質繊維断熱材では約12時間の位相の遅れがありました。位相の遅れは10~12時間程度が理想とされます。これは何を意味するかというと、夏場は昼間に屋根や壁のなかの断熱材に蓄えられた熱が、位相の遅れにより直接室内に達するまでに、夜になり冷えた外気に向かって放出されるような働きが期待されます。そして冬場にも暖房によって供給された室内の熱を多く蓄えることができ暖かさを持続させることができる。
日射量や外気温は一日の中で変化していますが、熱を蓄えることで、他の断熱材に比べ安定した室内温度を維持できる断熱材と言えます。
この蓄熱性に貢献する素材の性能として、「容積比熱」という指標が用いられます。容積比熱は、一定の体積当たりに蓄えられる熱の大きさを表します。木質繊維断熱材の容積比熱は32.0で、グラスウール(2.1)やポリスチレンフォーム(2.9)などに比べて格段に大きな熱を蓄えられることが分かります。
自然素材でできた断熱材の実力
木から作られている断熱材なので、木の特性である調湿性能があります。
木質繊維断熱材の水蒸気吸収量は約17%あり、鉱物質繊維断熱材では約2%程度です。
1m3の断熱材で17Lの水分を保持することができます。その為、ある程度の湿度コントロールが期待できる素材になります。
メリット
調湿性能がある-室内側防湿層が不要になる。
環境にやさしい(エコロジー建材)
熱伝導率0.04W/mK
蓄熱性があるので、温度変化が少ない
防音性がある
デメリット
細かい部分の施工性が落ちる
日本では新しいので、施工例が少ない
安くない
まとめ
まだまだ日本では普及していない断熱材ですが、北欧では実績が証明されており積極的に利用されています。付加断熱で施工するのであれば魅力的な断熱材であると言えます。