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【意外とできていない】夏の遮熱と冬の断熱対策|家の中を快適に保つ基本の知識

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夏の暑さが本格化してくると、外のジメジメした空気だけでなく、家の中の寝苦しさにも悩まされますよね。
だからといって、エアコンをガンガンつけっぱなしにするのは、体にもお財布にもやさしくありません。

実は、エアコンに頼らずとも快適な住環境をつくるカギは「遮熱」と「断熱」にあります。
この記事では、熱の伝わり方の仕組みから、夏と冬それぞれの効果的な対策法までを、わかりやすく解説します。

■ 熱の伝わり方には3つのタイプがある

家の中が暑くなる、あるいは寒くなるのは、外の熱が建物の内部に伝わるからです。
その熱の伝わり方には、大きく分けて3つの仕組みがあります。
それぞれの仕組みを理解することで、どのような対策が効果的かが見えてきます。

家の中で熱が移動する方法は、主に以下の3つです:

輻射(ふくしゃ)

遠赤外線などの電磁波によって、熱が空気や物体を介さずに直接伝わる現象です。
太陽光の暖かさやストーブの熱がその代表で、熱源と空間の間に直接の接触がなくても、赤外線が届けば熱は伝わります。
たとえば、冬の晴れた日に日なたに立っていると、空気が冷たいのに身体はポカポカと温かく感じるのは、この輻射熱によるものです。
住宅では、窓ガラスを通して太陽の赤外線が侵入し、床や家具を暖め、それがまた輻射熱として室内に放射されることで全体の室温が上がります。
輻射は遮ることが難しく、対策を怠ると室内温度の上昇や下降に大きな影響を与えるため、窓の遮熱対策が特に重要です。

伝導(でんどう)

物体そのものを通じて熱が移動する現象です。
たとえば、フライパンの底を火にかけると、取っ手までじわじわと熱くなるのは、金属という熱を伝えやすい物質の中を熱が伝わっていくためです。
住宅においては、アルミサッシの窓枠やコンクリート壁、金属製の手すりなどが外気の熱や冷気を室内へ伝えてしまう代表例です。
特にアルミは非常に熱伝導率が高く、外気温の影響をダイレクトに室内に伝えてしまうため、夏は暑く、冬は冷たくなりやすい特徴があります。
逆に、木材や樹脂などの素材は熱伝導率が低く、外気の影響を和らげるのに適しています。
このため、断熱性能の高い家づくりには、熱伝導を抑えた素材選びが非常に重要となります。

対流(たいりゅう)

空気や水などの流体が動くことで、熱が運ばれていく現象です。暖かい空気は軽くて上に上がり、冷たい空気は重くて下にたまるという性質があります。
この上下の移動が起こることで、室内の温度が次第に均一になっていきます。
エアコンや床暖房はこの対流を利用して部屋全体を効率よく暖めたり冷やしたりしています。
住宅では、冬に窓の近くに立つと足元が冷たく感じるのは、冷たい外気に接した窓の表面から空気が冷やされ、それが下降して床に沿って流れるためです。
これが「コールドドラフト」と呼ばれる現象で、暖房しても足元が寒くなる原因のひとつです。
逆に夏は、天井付近の空気が暖かくなりがちで、冷房効率が悪くなることがあります。
サーキュレーターなどで空気を循環させることで、対流をコントロールし、より快適な室温に保つことができます。
このように、対流を上手に扱うことは、住宅の快適性とエネルギー効率を高めるうえで非常に重要です。

住宅における熱の移動割合は、

  • 輻射:75%
  • 対流:20%
  • 伝導:5%

このように、住宅に影響する熱の大半は太陽からの輻射熱です。
特に夏の太陽は角度が高く、建物の屋根や壁、窓に直接的な日射が強く当たります。
この太陽光(輻射熱)は赤外線として空間を通り抜け、ガラス窓を透過して室内を加熱します。

また、太陽の高度が高くなると、大気を通過する距離が短くなり、雲や塵などによる散乱や吸収が少なくなるため、より多くの熱エネルギーが地表に届きます。
そのため、夏は赤道に近い地域や日本でも南向きの窓から強烈な日射が入り込み、室内の温度が一気に上昇するのです。
逆に、冬は太陽の角度が低くなることで日射量が少なくなり、同じ時間でも暖まりにくくなります。

このように、太陽の動きや角度の変化は、住宅の温熱環境に大きな影響を与えているのです。

 

■ 夏の暑さはなぜ家の中に入ってくる?

夏に家の中が蒸し風呂のように暑くなる最大の原因は、太陽からの強い日射です。
特に日本の夏は、太陽の角度が高く、直射日光が屋根や壁、そして最も脆弱な「窓」に強く降り注ぎます。

太陽の光は空気を通り抜けて建物に届きますが、その中でも赤外線(熱線)は、窓ガラスを透過して室内に入りやすく、床や壁をじわじわと加熱します。
この熱は一度入ってしまうと逃げにくく、室温を急激に押し上げます。

また、屋根や壁は太陽光を直接透過しないものの、表面が加熱されることで、その熱がじわじわと建物内部に伝わってきます。
これにより、屋根裏や壁の内側の空気も暖まり、家全体の温度が上昇していきます。

さらに、都市部ではアスファルトやコンクリートの照り返しもあり、外気温そのものが高くなっているため、自然換気や通風だけでは熱気を逃がしきれない状況も生まれます。

家の中に入ってくる熱の内訳(目安)

  • 窓からの流入:約70% ─ ガラスを透過する日射熱(輻射)が主な原因
  • 壁や屋根:約20% ─ 建材が吸収した熱が徐々に室内に伝わる
  • 換気や床など:約10% ─ 隙間風や床下からの熱気も影響

つまり、夏の熱対策では「窓の遮熱」が最も効果的かつ優先度の高いアプローチとなります。
窓を中心とした対策を講じることで、体感温度や冷房効率が劇的に改善される可能性があります。

 

■ 冬の寒さを防ぐには?

冬の住まいで最も重要なのは、せっかく暖房で暖めた室内の空気を「いかに逃がさないか」です。
つまり、“熱を外に出さない工夫=断熱”が鍵になります。外気温が0℃近くになる冬の朝、室内が寒くなる最大の理由は、窓や壁、屋根、床などから熱が逃げてしまうからです。

とくに注目すべきは「窓」です。窓は熱の出入りが最も多い開口部であり、壁や屋根に比べて断熱性が劣ることが多いため、冬の寒さ対策の要所となります。

 

熱の逃げる割合(熱損失)

  • 窓からの損失:約60% ─ ガラスやサッシ部分の断熱性が低いため、暖房熱がここから集中して逃げていきます。
  • 壁・屋根:約20% ─ 面積は広いですが、断熱材がしっかり入っていれば比較的損失は少なくできます。
  • 換気や床など:約20% ─ 換気システムや床下の断熱が不十分だと熱が逃げやすくなります。

これらのことから、冬の寒さ対策では、まず「窓の断熱」を見直すことが効果的です。
たとえば、単板ガラスからペアガラスやトリプルガラスへ、アルミサッシから樹脂サッシへの交換、または内窓(インナーサッシ)の設置などが挙げられます。
こうした対策を取ることで、室内の暖かさを保ちやすくなり、結果として暖房費の節約にもつながります。

冬は逆に、家の中の暖かい空気をいかに逃がさないかが課題になります。

 

■ 遮熱と断熱の違いと役割

私たちが快適な室内環境を保つために必要なのが「遮熱」と「断熱」です。
この2つの言葉は似ているようで、実は目的も役割も大きく異なります。
季節によって必要な性能も変わってくるため、それぞれの違いと役割をしっかり理解しておくことが、家の暑さ・寒さ対策には欠かせません。

遮熱とは?

遮熱は「外から入ってくる熱をブロックする」ことを指します。
主に夏に必要な対策で、強烈な日射(太陽からの赤外線)を室内に入れないように工夫するのが目的です。
特に窓は、太陽光を透過して熱を取り込んでしまうため、すだれ・シェード・遮熱フィルムなどを使って、室内に入る前の段階で太陽の熱を防ぐことが大切です。

また、遮熱対策は「窓の外側」で行うのが基本です。
室内側でカーテンなどを使っても、すでにガラス面が加熱されてしまうため、熱の侵入を完全には防げません。
屋根や壁の外側にも遮熱材を施工することで、建物全体への熱の侵入を抑えることができます。

 

断熱とは?

断熱は「屋内の熱を外に逃がさない」ための対策で、主に冬に力を発揮します。
せっかく暖房で暖めた空気が、窓や壁、床などから逃げてしまわないようにすることで、室温を一定に保ち、暖房効率を高めるのが目的です。

断熱材には、グラスウール・発泡ウレタン・フェノールフォームなどがあり、それぞれに熱の通しにくさ(熱伝導率)があります。
窓には断熱性の高い樹脂サッシやトリプルガラスを採用したり、内窓を取り付けたりすることで、断熱効果を高めることができます。

断熱は夏にも効果があります。
室内が外気の影響を受けにくくなるため、冷房で冷やした空気が逃げにくくなり、エアコンの効きも良くなります。

 

遮熱と断熱のまとめ

  • 遮熱:外からの熱を家の中に入れない(主に夏の対策)
    • 窓の外側で遮るのが基本(すだれ、シェード、フィルムなど)
    • 建物全体の熱の侵入を防ぐ効果
  • 断熱:家の中の熱を外に逃がさない(主に冬の対策)
    • 内窓や断熱材、気密施工が重要
    • 室内の温度を一定に保ち、冷暖房効率をアップ

どちらも快適な住まいづくりには不可欠な存在です。正しく使い分けて、季節を問わず快適な室温をキープしましょう。

 

■ 夏の遮熱対策|窓の外側でカットするのが基本

夏の暑さ対策で最も効果的なのが「遮熱」です。
特に窓からの熱の侵入は、家の中に入ってくる熱の約70%を占めるといわれています。
日射による熱の侵入を減らすためには、「熱が室内に入り込む前にブロックする」ことが非常に重要です。

ここでポイントになるのが、“室内側”ではなく“窓の外側”で対策するという考え方。
なぜなら、ガラスが一度熱を受けてしまうと、その熱がガラスを伝わって室内に入り、空気を暖めてしまうからです。
つまり、ガラスに当たる前に太陽光を遮る工夫が求められます。

 

有効な方法

  • すだれ・シェード・オーニング: これらは窓の外に設置することで、太陽光がガラスに直接当たるのを防ぎます。
    特に午後の強い西日には効果が大きく、日射による室温上昇を大幅に抑えることができます。
    すだれは簡単に設置でき、風通しも良いのが特徴。
    シェードやオーニングは巻き上げ可能なものも多く、使わない季節は収納できるのもメリットです。
  • 庇(ひさし): 南側の窓に取り付けることで、夏は高い角度から差し込む日射をカットし、冬は低い角度からの太陽光を室内に取り込むという、季節に応じた太陽の動きを利用した遮熱手法です。
    建築時にあらかじめ設計に取り込むことで、自然エネルギーをうまく活用するパッシブデザインの一例です。
  • 遮熱フィルム: 窓ガラスに直接貼ることで、赤外線(熱線)の透過を大幅にカットします。
    透明タイプでも十分な遮熱性能を持つ製品もあり、眺望や採光を損なわずに対策可能です。
    既存の窓に後付けできる手軽さが魅力ですが、貼り付けにはある程度の技術が必要です。
  • 緑のカーテン: ゴーヤやアサガオなどの植物を使って、窓の外側に自然の「日除け」を作る方法です。
    葉が茂ることで日射を遮り、植物の蒸散作用により周囲の気温も下げる効果があります。
    夏の省エネ対策としてエコで見た目も涼しげなため、特に戸建て住宅で人気があります。

DIYポイント

遮熱・断熱の対策は、必ずしも大掛かりな工事が必要というわけではありません。
以下のような方法なら、DIYでも簡単に始められ、費用対効果も高いのでおすすめです。

  • アルミサッシ+単板ガラスの窓には「内窓」の後付けが効果大
    日本の住宅で多く使われているのがアルミサッシ+単板ガラスの組み合わせ。
    このタイプは断熱性能が低く、夏は暑く冬は寒くなりがちです。
    そこで有効なのが「内窓(インナーサッシ)」の後付けです。
    既存の窓の内側にもう1枚窓を設置することで、空気層が生まれ、遮熱・断熱・防音効果が格段にアップします。
    工具が苦手な方でも、サイズを測ってオーダーすれば、比較的簡単に取り付けが可能です。
  • スダレや遮熱フィルムの追加で、手軽に日射カット
    既存の窓にすだれやロールスクリーンを取り付けるだけでも、日差しを遮って室温の上昇を防ぐことができます。
    特にすだれは、風通しを確保しながら直射日光をカットできる優れもの。
    窓の外側に設置することで、熱の侵入そのものをブロックできます。
    また、遮熱フィルムはガラスに貼るだけで赤外線(熱線)の透過を減らし、エアコン効率の向上に貢献します。
  • 網入りガラスは熱がこもりやすいので注意
    網入りガラスは、火災時にガラスが飛び散るのを防ぐための構造ですが、内部に金属の網が入っているため、熱を吸収・保持しやすいという特徴もあります。
    夏場に内窓や遮光カーテンを追加して密閉空間を作ってしまうと、網入りガラスが過熱し、ひび割れの原因になることも。
    こうしたケースでは、外側の窓を少し開けて換気をしながら遮熱対策を行うと、安全性と快適性の両方を確保できます。

DIYならではの工夫で、初期投資を抑えつつ快適な室内環境を整えることができます。特に賃貸住宅やリフォーム前の一時的な対策としても効果的です。

 

■ 冬の断熱対策|熱を逃がさない工夫を

冬の寒さを乗り切るためには、「断熱」と「日射取得」をセットで考えることが重要です。
暖房を効率よく使い、光熱費を抑えるには、暖めた空気を逃がさず、さらに太陽の熱をうまく取り入れる工夫が求められます。

■ リフォーム・新築での断熱対策

  • 内窓(二重窓)を設置する
    内窓とは、既存の窓の内側にもう一枚窓を追加するリフォーム方法です。
    2枚の窓の間にできる空気層が“断熱材”のような役割を果たし、外の冷気を遮断し、室内の暖かさを外に逃がさない効果があります。
    冷気を防ぐだけでなく、結露の軽減、防音効果も期待できます。比較的手軽に施工できるため、賃貸や部分的なリフォームにも最適です。
  • 樹脂サッシ・トリプルガラスの導入
    新築や大規模リフォームであれば、断熱性能の高い「樹脂サッシ」と「トリプルガラス(3層ガラス)」の窓を選ぶのがベストです。
    アルミに比べて熱を通しにくい樹脂素材と、3層構造のガラスが外気をしっかり遮断。
    さらにガラスの間にはアルゴンガスなどを封入し、断熱性を大幅に向上させています。
    暖房効率が高まり、快適さと省エネを同時に実現できます。
  • 厚手のカーテンや断熱ボードの活用
    すぐに取り入れられる対策としては、厚手のカーテンや断熱ボードの設置があります。
    特に夜間はカーテンを閉めるだけで窓からの冷気を防ぎ、室温の低下を緩やかにできます。
    窓の下部やサッシの隙間からの冷気は、断熱ボードやすき間テープでカバーするだけでもかなり変化があります。
    コストを抑えた即効性のある工夫としておすすめです。

■ 冬は「日射取得」も忘れずに

冬のもうひとつの大事なポイントは「日射取得」、つまり太陽の熱を家の中に積極的に取り込むことです。
特に南向きの窓は日中にカーテンを開けておくことで、太陽光が室内の床や壁に当たり、それが蓄熱されて部屋をじんわり暖めてくれます。

このような自然エネルギーを活用すれば、暖房機器に頼りすぎずに済み、電気代の節約にもつながります。
夕方以降はすぐにカーテンを閉めて熱を逃がさないようにするなど、日中と夜間で“窓の使い方”を変えることも重要な工夫です。

リフォームでもDIYでも、工夫次第で冬の住まいはぐっと快適になります。

 

 

まとめ|「遮熱」と「断熱」で家はもっと快適になる

家の暑さ・寒さに悩んでいるなら、まず見直すべきは「窓」です。

夏は、窓の“外側”で熱を遮る「遮熱対策」を。
すだれ・シェード・遮熱フィルムなどで日射をカットするだけで、エアコンの効きがぐっと良くなります。

冬は、窓の“内側”から暖かさを守る「断熱対策」を。
内窓(二重窓)や厚手のカーテン、樹脂サッシの採用で、冷気をシャットアウトし、暖房効率がアップします。

そして、窓だけでなく、屋根・壁・床にも断熱を意識すると、家全体の熱の出入りをコントロールでき、さらに快適な住まいに近づきます。


すぐに始められる!段階的な対策のすすめ

  • 今できる:遮光カーテン、すだれ、断熱ボードの設置

  • 予算があれば:内窓の取り付け、サッシの交換

  • 将来的には:壁・屋根の断熱リフォームやパッシブデザインの導入

「完璧な断熱」をいきなり目指すのではなく、できるところから少しずつ改善することが、無理なく快適な住まいをつくる一番の近道です。

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